サンフランシスコ拠点のTools for Humanityは、World Appの大規模アップデートを発表し、多機能なスーパーアプリへと進化させた。
2025年12月11日に発表された本アップデートでは、暗号化通信、暗号資産取引、ID関連ツールを統合し、AIボットの増加やオンライン上の真正性に対する懸念に対応している。
アップデートの主な機能
本アップデートでは、日常利用を想定した複数の新機能が追加され、セキュリティと使いやすさが重視されている。
World Chatによる暗号化メッセージ

World ChatはSignalに近いエンドツーエンド暗号化を採用し、認証済みユーザーからのメッセージは青色の吹き出しで表示され、信頼性を即座に確認できる。
グループチャット、投票やゲームなどのチャット内ミニアプリ、暗号資産の直接送金にも対応。連絡先や送信時刻に関するメタデータは収集されず、プライバシーが確保されている。
暗号資産決済とウォレット機能の強化

ユーザーはVenmoのような感覚で暗号資産を送受信でき、USDC、EURC、各国のステーブルコインを含む100種類以上のトークンに対応している。入金用の仮想銀行口座、アプリ内スワップ、アルゼンチン国内100万以上の加盟店で利用可能なQRコード決済なども提供される。
タッチ決済対応の物理的なWorld Cardは、2026年初頭の提供開始が予定されている。
収益機会とミニアプリ
Morphoを通じたDeFi利回りにより、WLDで最大18%、USDCで最大15%の利回りを提供。World IDによる不正防止が組み込まれている。
ゲーム、金融、AIツールなど400以上のミニアプリが用意され、一部はチャット内から直接利用できる。
プロジェクトの背景と目的
本プロジェクトは2019年にサム・アルトマンとアレックス・ブラニアによって設立され、当初はWorldcoinとして始動し、2023年にWorldへとリブランディングされた。
虹彩スキャンを行うOrbを用いて、氏名やメールアドレスなどの個人情報を伴わない匿名のWorld IDを発行している。
ディープフェイクやボットといったAI時代の課題に対応し、プライバシーを重視したグローバルなネットワーク構築を目的としている。
認証用途にとどまらず、ソーシャルおよび金融機能を拡充することで、利用拡大を図っている。
現在の普及状況と戦略
2025年末時点で、アプリのダウンロード数は約4,000万件に達し、3.6秒ごとに認証、1.7秒ごとに新規登録が行われている。認証済みWorld IDの保有者は約2,000万人で、将来的には10億人規模を目指している。
月間ユーザー数ベースで自己管理型ウォレットのトップに位置づけられており、WeChatから着想を得つつ、新興市場を中心に国境を越えた金融体験を重視している。決済機能は認証なしでも利用可能とし、参入障壁を下げている。
デジタル環境への広範な影響
本進化により、WorldはXやCoinbaseといったアプリの競合として位置づけられ、Web3金融と安全なメッセージ機能を融合させている。AIリスクが高まる中、出会い系やコマースなど、信頼性の高いオンライン空間の形成を後押しする。
発展途上地域における生体認証データへの懸念は依然として残るものの、プライバシー重視の姿勢が普及の障壁を下げる可能性がある。
編集部コメント
今回のアップデートは、Worldにとって大きな戦略転換を示しており、サム・アルトマンのAI分野での知見を活かし、人間認証と実用的なツールを結び付けている。
OpenAIの影響力を背景に、アジアでWeChatが普及したように、暗号資産の一般化を加速させる可能性がある。
一方で、成功の鍵はプライバシー規制への対応と、Orbのグローバル展開にかかっている。
予測では、AIサービスとの統合が進めば、ラテンアメリカを中心に急成長し、2027年までにユーザー数が1億人に達する可能性が示されている。




